やりたいことを見つければ、仕事に終わりはやってくる
なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である
- 作者: 中島聡
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2016/06/08
- メディア: Kindle版
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友人から紹介された本をさっそく読みました。
「元マイクロソフト伝説のプログラマー」である著者が、好きなことに徹底的に取り組むための時間術について書いた本です。
私にとって為になった部分≒実際に取り入れた部分をピックアップしてご紹介します。
脱却せよ!ラストスパート志向
本書前半で「なぜあなたの仕事は終わらないのか」、タイトルそのものズバリな話が出てきます。
それは、「ラストスパート志向」に陥っているからです。
つまり「締切が近づいたら頑張ろう」という態度で仕事に臨むのが、事の元凶です。
ラストスパート志向の弊害は、ただ見積もりが甘くなることだけではありません。締切直前に心理的に追い込まれた状況が作り出されることによる、効率の低下もあります。
なんとしても締切に間に合わせるためにはここから脱却しなければなりません。
思えばそもそも「残業」という言葉自体が、締切に遅れる前提で存在しているようにも思えてきます。
やるなら圧倒的に朝型に切り替えて仕事に当たったほうが良いと著者は説きます。なんと自身も4時に起きて仕事をすぐ始めるそうで、驚きの徹底ぶりですよね。
でも朝ならほかの人から話しかけられることもありませんし、集中して仕事できる環境があります。合理的な判断です。
界王拳でロケットスタート
集中するという意味で、マルチタスクをやめてシングルタスクを心がけるよう書かれています。
大きな仕事は同時期になるべく1つだけ抱えるようにして、それを朝から猛烈な勢いで取りかかってこなしていくというスタイルです。
これが「ロケットスタート仕事術」で、この本の核となる時間術です。
またほかに出てくるオリジナルワード「界王拳」は、ドラゴンボールネタ。
たとえば朝起きてから昼食までは「界王拳20倍」、昼食後数時間は「界王拳10倍」、残りは「流し」というように、集中度合いを数値で設定するのです。
どの時間にどのくらいの本気度を使うか?と、エネルギーの総量を数値で把握して取り組むのが大事だと感じました。一日に使えるエネルギーには限界がありますからね。
2割の時間で8割完成
締切までの期間を見たときに「最初の2割の期間でその仕事全体の8割まで完成させる」のを目標にします。
経済学で言う「パレートの法則」ですね。本書にはその言葉の代わりに「80:20の法則」と出てきます。
すなわち簡単に言うと「2割の資源で8割やり遂げる」わけです。
残りの8割の期間をゆったりと使って仕上げにかかります。これなら押さえるべきところは最低限押さえたうえで質の改善に取り組めます。
当然期限に間に合う確率が高まり、精神的余裕も生まれます。
何より「締切は遠いからまだ本気を出さなくていい」という妄念を打ち破れます。
やるべきことは最初に終えておく、スマートさがありますね。
あなたの仕事は何か?
さて突然ですが、「今度のパーティーに花を用意してくれ」と誰かに頼まれたとします。
花を買う店を下調べし、当日に届けてもらうようあなたは注文しました。
しかし何の事情か、当日花を届けるのに間に合わなくなったと花屋から連絡が入ります。
責められるべきは誰でしょう?
もしあなたが「花を注文してくれ」と頼まれたのなら、注文するまでが仕事かもしれません。
ところが実際には「花をパーティーに用意する」が仕事なのです。ということは花屋がどんな状況だろうと、遅れる責任はあなたに降りかかります。
厳しいですよね。でも確かにそうだなと納得しました。
言ってしまえばどんな手段を取っても花が用意できればミッションクリアなのです。
逆にどんなに努力したとしても目的である花の用意が間に合わなければ失敗です。先回りしてリスクに対処する能力が問われるのです。
目的と手段を取り違えないように気をつけたいと思う話でした。
「勉強」の独り歩き
「将来の役に立ちそうだから」という理由で語学やその他学問を勉強したい人はたくさんいるでしょう。
でも多くの場合長続きしません。なぜでしょうか?
それは「やりたい」と心底思っていることではないからです。
これが私にグサッときたのですが、「英語を話せるようになればどこでも通用しそう」とか「プログラミングができればきっと役に立てる」とか、しばしば漠然とした希望を抱きがちです。
そういう人は本気じゃないからいつでも投げ出せるんです。
もちろん、本当に英語が好きだとかプログラミングに一日中没頭していられるとかであれば問題はありません。
ですが「なんとなく」の枕詞がついていたら要注意です。
私もそうです。曖昧な願望をもとに勉強することがあります。でもそれは本心ではないのです。たぶん見栄です。
そうではなくて、とにかくやりたいことをやりましょう。知識はそれを実践しているうちに自ずと身に着くのです。
これも非常に納得がいきました。
私は別に「Microsoft Wordの使い方に詳しくなりたいなあ」なんて、微塵も思ったことはないのですが、まわりの人よりは詳しい自信があります。
それは社内向けの手順書を作ってきた経験の中で調べながら培ってきたものです。
ここで視点を変えてみます。
今年の春にリリースしたサーバー操作の効率化ドキュメントは、今思い返すとどれほど役に立つものか分かりません。
なぜなら方法論だけでは何にもならないからです。最後は本人のマインド次第です。「さっさと作業を終えて帰るぞ!」というマインドが前提になっていて、はじめて方法論が活きます。
至極、目的と手段は転倒しやすいものだと心得なければなりませんよね。
集中力の要らない仕事を見つけよう
先日触れたことですが、やっぱり「やりたいことをやる」が答えな気がします。
動機がなければ動けません。「動」く「機」縁とでも言いましょうか。
本書の内容でハッとしたのはこのことです。
ここまでの時間術を使っても、どうにも残ってしまう問題があります。
それは、どんな技を駆使しても、どうにも集中できない人です。
(中略)
集中力を無理に引き出さなければいけない仕事をそもそもするな、ということです。そういった仕事は、本当はあなたがやりたくない仕事であり、そもそもそういう仕事に対して本質的な集中力を発揮するのは難しいという話です。
言われてみればそりゃそうなんですよね。やりたくないことに気が進まず、集中できないなんて当たり前ではないですか。
使い古された「好きこそ物の上手なれ」が一層真実味を帯びてきます。
私はと言うと、仕事が楽しめています。
でもそこには「早く帰れる」が内包されているような気もします。
当然無報酬でやりたいとは思いませんし、報酬があってさえ長時間労働は身に堪えます。
発想を変えると、「キッパリ決められた時間に帰宅する」こと自体に喜びを覚えているのかもしれません。
そのために行う研究工夫は、楽しいものです。
こびりついた風習を断ち切って、ゼロベースで効率的な方法を考える過程はそのものが娯楽的です。
このまま効率化に邁進するか、それともやりたいことを新たに発掘するか・・・。これからの身の振り方を考えるとともに、とても勉強になる一冊でした。
おわりに
この本から私がすぐ取り入れたのは、ロケットスタートです。
朝には集中すべき仕事を割り当てて、メールチェックを放置して取り組みます。
メールチェックはこの数日、11時近くまで行わないようになりました。
そしてパレートの法則も念頭に置いて、すばやく8割完成を目指すようになりました。一緒に仕事を進める仲間がいるとなると、この力はさらに重要です。
プロトタイプを作って共有できれば、進むべき方向性のズレが都度修正できるからです。
今まさに、実践中です。
そういえばどうでも良いのですが、筆者は私の高校・大学の先輩だと読みながら気づきました。
熱心に授業の予習なんてやっておらず、大半の学生と同じくテスト前の追い込みばかりやっていましたが…。
授業態度の違いはあれど、貴重な先輩です。そんなこともあってか、とても納得できる、身になる本でした。