3ステージからマルチステージへ
ようやく読み終えました。
1章読むごとに軽い要約をEvernoteに取る、というのを自らに課していたため余分に時間がかかってしまいました。
ざっとまとめます。
今、人生の計画を立てよう
表紙にも書かれているとおり、「100年時代の人生戦略」を立てることが本書の目的です。
にわかには信じがたいのですが、人生100年時代が到来するようです。今20歳の人たちは、その半分が100歳まで生きるとのことです。
平均寿命の延びはずっと続いている傾向のようで。ということは、(仮に今年生まれた人がいたとして)今から100年後に起こる環境問題が私たちの手の届く範囲の問題であるということなのです。
「自分とは直接関係のない、遠い先の世代の話」として環境問題などを放っておく時代ではなくなってきたのです。(もちろん、多少の接点はあっても後の世代のことは知らないとする向きもあるでしょうけど・・・)
さて問題は色々ありますが、多くの人の関心事はお金でしょう。
生きる期間が仮に延びれば当然必要なお金も増えます。そうなれば次の2つの対応が迫られます。
①貯蓄を増やす
元気に働ける期間(勤労期間)に必死でお金を貯めるのです。
まあ、そうは言っても貯金は難しいです。本書の試算を見て驚愕するばかりでした。年間10%以上も貯蓄に回さないと老後が成り立たなかったりします。でも現実にそんなに貯蓄している人はいません。もちろん私もできていません。
人間は短期的視野しか持てない生き物だと痛感するしかないですね。
②勤労年数を増やす
あるいはこんな手もあります。働く期間を延ばすということです。
これも試算によれば、(貯金していないとして)「70、80喜んで!」働かなければ老後は支えられないようです。
そこまで果たして健康でいられるのかという問題もありますし、精神的にもすり減りそうです。20代~80代でずっと何かの仕事に就いているわけですからね。おかしくなりそうです。
必要な老後資金をいかに確保すべきか。これができないと安心できませんから、せっかく長寿化時代と言ってもその恩恵にあずかれません。そうなってはもったいない限りですからしっかりと計画を立てなければなりません。
エイジとステージを切り離そう
1945年生まれのジャックという仮想人物が登場します。彼はいわゆる「3ステージ型」の人生を生きました。
教育→勤労→引退という3つのステージを、順序良くこなしていく一斉行進型の人生です。かつてはこれが最も安定的であり、誰もが望む人生のあり方でした。
ところが今やその3ステージ型は崩壊しつつあります。
政府の年金制度は当てになりませんし・・・そうなると勤労期間の貯蓄か勤労期間自体の引き延ばしが必要です。
ところがここへ来てAIなどのテクノロジーの台頭もあります。果たして勤労期間、年を経てもなおAIや若者に負けず劣らず働き続けられるのかどうか、疑問です。
そこでマルチステージが当たり前になるのではないか、というのが著者たちの見解です。
既存の概念を3ステージ=3.0シナリオの人生とするならば、3.5シナリオ、4.0シナリオ、5.0シナリオのような多様な人生が考えられます。
人生のステージが増えれば増えるほど、活動内容は多様になります。途中でスキルを学びなおしたり、まったく違う業種に移行したり、複数の仕事を掛け持ちしたり、すり減らした活力の回復に充てたり・・・。
曰く「エイジ(年齢)」と「ステージ」が切り離されていくだろうということです。
たとえば今の社会で言えば「課長」と聞くと「さすがに40代くらいかな」という予想ができたり、「大学生」と聞くと「20歳前後ね」という予想ができたりします。
ところがマルチステージの時代にはこの壁が無くなっていくのではないかと言います。
先述したとおりで、いくつになっても学び直しのために大学に通うことがあるかもしれませんし、若くして才能が認められれば昇進もあるかもしれません。
いずれにしても今のように一斉行進で大学卒業~定年退職をすべて勤労期間に充てているとは限らなくなるのです。必然的に年齢でステージを判断することはできなくなります。
無形の資産こそ真の課題
金銭的なもの、目に見えて扱えるものを有形の資産とすれば、健康や家族など形のないものは無形の資産です。
長寿化時代、有形の資産は当然大事なのですがそれだけを追い求めていてもいけません。勤労時間を単純に延ばして有形の資産を築くことができても、心身ズタボロ家庭崩壊状態ではとても良い人生とは呼べないからです。
マルチステージの目的は、そんな無形の資産に投資する期間を意図的に設けることでもあります。
夫婦間で綿密な計画を練ることで勤労期間のいわば「中休み」を代わる代わるに取得することも重要です。がむしゃらに働くのは得策とは言えません。
統計的に見れば、マルチステージに向いているのは所得が高い人、とりわけ専門職と技術職のようです。やはり代替可能性の低い人間が生き残るということでしょうか。
残念なことに、生涯所得が少ない人ほど平均寿命の延び率も低いようです。所得の低い女性についてはむしろ平均寿命が縮んでいるほどです。
生活水準が上げられないから寿命が縮むのか、勤労期間が長くなって活力資産をすり減らすから寿命が縮むのかは定かではありませんが、いずれにしてもマルチステージを行く高所得になりたいものです。
長寿化時代にあって真の課題は無形の資産のマネジメントであると著者は説きます。
元気な老後を過ごすには、計画的な資産づくり(有形&無形)が肝要なようです。
パラダイムシフト
単に「所得が現在高い」だけでは不十分だと思わされました。
というのも、所得が高ければそれだけ生活水準を上げに上げた状態で引退期間に突っ込んでいくからです。
3ステージ型で言えば、基本的に年金しか受け取るものが無い状態です。それなのに最終所得に合わせた生活水準を保とうとすれば、崩壊あるのみです。
だからこそ今磨くのは無形の資産だと心得ています。負け犬の遠吠えに近く聞こえるでしょうが、現在3ステージ型に近い形でどんな高給職に就こうが結果は同じ気がします。
相対的な問題でしかありません。転職して年収が10倍になったとして、生活水準もきっと上がるでしょう。貯蓄ができなければひもじい引退生活がよだれを垂らして待ち受けています。
肩書きが力を持つのは、3ステージ型の特徴です。なぜなら「エイジ」と「ステージ」が一致しているからです。でも今やそれも消えて無くなってしまいそうです。
ステージの移行について述べているこの箇所に、私は少し希望を見出しました。
資質をふんだんにもっているのが主に所得上位 25% の層、とくに専門職と技術職の人たちだ
やるべきことは技術を持つこと、専門を極めることだと思いました。
(本当を言えばこの引用箇所はコンテキスト的にやや引用をためらうところなのですが、一旦それは置いておきます。)
人材争奪戦が激化すれば、有能で経験豊富な人たちは、要求が受け入れられなければ会社を辞めると脅せる。
これを目指そうと考えました。
すなわち、今の職場でどれだけ自分の無形の資産を高められるか。どれだけ自分の価値を周囲に認めてもらえるのかということにチャレンジしたいのです。
誰が気に留めなくても自分は目ざとく気に留めて意見し、仕事上の成果向上に努めるとともに、ひそやかに移行計画をゆっくりと練ろうかと思います。
当面は悦に入るだけかもしれませんが、悪いことではないので続けていきます。昨日も私に関する良いうわさを聞いてうれしくなり、俄然やる気が出たのでした。